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友安昌幸 - 合同会社アミコ・コンサルティング

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目次

半導体サプライチェーン再編の背景と現状

半導体産業は今、大きな転換点を迎えている。米中対立に端を発した地政学的緊張、新型コロナウイルスによるサプライチェーン混乱、そして各国の経済安全保障政策の強化が相まって、グローバルな半導体サプライチェーンの再編が急速に進んでいる。

私が半導体製造装置開発に携わってきた38年の経験からみても、現在の変化は過去に例を見ないスピードと規模で進行している。特に2018年から始まった米中間の関税引き上げは、半導体サプライチェーンに大きな影響を与えた。

日本銀行の最新の研究論文によれば、米国による対中関税引き上げを自然実験と捉えた分析では、中国の対米輸出の大幅な減少や第三国の対米輸出の増加が半導体関連財においても観察されている。これは半導体サプライチェーンの再編が現実に進んでいることを示す明確な証拠だ。

米中デカップリングの実態と限定的な影響範囲

米中間のデカップリングについては様々な見方があるが、実態を正確に理解することが重要だ。注目すべきは、デカップリングが全産業に及ぶわけではなく、特定の先端技術分野に限定されている点である。

米中対立が激化した2018年から2019年にかけて、確かに両国間の貿易は減少傾向にあった。しかし、コロナ禍を経た現在、両国間の貿易は回復し、一部の分野ではむしろ増加している。

米中間の半導体関連貿易の推移グラフ

特に注目すべきは、半導体サプライチェーンの再編が主に先端半導体技術に集中している点だ。米国は安全保障上の理由から、最先端の半導体技術や製造装置の対中輸出を制限しているが、それ以外の分野では経済的利益を確保するために中国との関係を維持している。

このような「プチ・デカップリング」とも言える状況は、半導体産業全体というよりも、特定の先端技術分野に限定されたサプライチェーン再編をもたらしている。具体的には、5nm以下の最先端ロジック半導体や、AIチップ、量子コンピューティング関連技術などが主な対象となっている。

つまり、半導体サプライチェーンの再編は、産業全体の分断ではなく、戦略的に重要な特定分野における選択的な再構築と理解すべきである。

欧米諸国の半導体政策と大規模支援の動向

先端技術分野における半導体サプライチェーンの再編に関して、欧米諸国は具体的な政策対応を進めている。アメリカは2021年2月に「米サプライチェーンに関する大統領令」を発出し、同年6月には半導体を含む重要4品目のサプライチェーンに関するリスクと対処法を明確にした報告書を発表した。

この報告書では、半導体サプライチェーンの脆弱性が指摘され、国内の重点産業の生産力・研究開発力強化やサプライチェーンの調査・監視のために大規模な経済支援が提言されている。また、日本を含むQuad(日米豪印戦略対話)やG7などの同盟国との協調の必要性も強調されている。

各国の半導体政策比較図

イギリスは2020年12月に「5Gサプライチェーン多様化戦略」を発表し、約350億円を投じて多様で競争力のある情報通信関連のサプライチェーンの構築を目指している。このプロジェクトには日本からもNECが実証実験に参加しており、2021年6月には5G向けの基地局製品を英通信大手ボーダフォン・グループから受注している。