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友安昌幸 - 合同会社アミコ・コンサルティング

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目次

成熟プロセス半導体とは何か?その定義と重要性

半導体産業において「成熟プロセス半導体」という言葉を最近よく耳にするようになりました。この言葉は一般的に28nm以上の製造プロセスを指します。40nm、90nm、180nmといった比較的古い世代の製造技術を用いた半導体チップのことです。

先端プロセスが5nm、3nmと微細化を進める中で、なぜこれらの「古い」技術が改めて注目を集めているのでしょうか。この疑問に答えるには、半導体産業の全体像を理解する必要があります。

成熟プロセス半導体の定義と種類を示す図表

半導体製造プロセスの歴史を振り返ると、ムーアの法則に従って約1.5〜2年ごとに集積度が倍増し、より小さなチップに多くのトランジスタを詰め込めるようになってきました。しかし、この微細化の進展は近年、物理的・経済的な限界に直面しています。

先端プロセスでは製造コストが指数関数的に上昇し、設計の複雑さも増大しています。そのため、すべての用途に最先端プロセスが必要というわけではなく、むしろ成熟プロセスが最適な選択となる場面が多く存在するのです。

成熟プロセス半導体市場の現状と成長予測

成熟プロセス半導体市場は、現在どのような状況にあるのでしょうか。台湾の調査会社トレンドフォースによると、2025年における世界トップ10社の成熟プロセスファウンドリの生産能力は前年比6%増となることが予想されています。

特に注目すべきは中国の動向です。中国政府の「国内で消費されるICは国内で製造されたものを優先する」という政策の影響もあり、中国の半導体ファウンドリーの世界市場シェアは拡大傾向にあります。2026年には26%と2022年から2ポイント増加する見込みです。

さらに、40/28nmプロセス用の製造装置の輸出が承認されるシナリオでは、中国の2026年のシェアは28%にまで達する可能性があるとトレンドフォースは予測しています。

成熟プロセス半導体市場の成長予測グラフ

成熟プロセスと7nmプロセス以下の先端プロセスでは需要が明確に乖離しています。5nm以下の先端プロセスはAIサーバ/HPC、PC、スマートフォン分野からの需要により2024年末までフル稼働が見込まれる一方、主に28nmよりも前の世代の成熟プロセスは緩やかな回復にとどまっています。

特に2024年後半の平均稼働率は上半期比で5〜10%増に留まっているというデータもあります。ただし、スマホやPC、サーバの伸びに加え、自動車および産業機器分野の在庫調整が2024年内に完了する見通しのため、2025年は成熟プロセスの工場稼働率を支えるだけの需要回復が期待できるとトレンドフォースは見通しを示しています。

なぜ今、成熟プロセス半導体が注目されているのか

成熟プロセス半導体が注目を集める理由は複数あります。まず第一に、コスト効率の観点から見た優位性です。先端プロセスの開発・製造コストは天文学的な金額に達しており、すべての用途に最先端技術を適用することは経済的に合理的ではありません。

多くの産業用途、自動車、IoTデバイスなどでは、成熟プロセスで十分な性能が得られるケースが多いのです。

第二に、サプライチェーンの安定性と地政学的要因があります。米中技術覇権競争の中で、先端プロセス技術への輸出規制が強化されています。一方、成熟プロセス技術は比較的規制が緩やかで、グローバルなサプライチェーンを維持しやすい状況にあります。