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友安昌幸 - 合同会社アミコ・コンサルティング

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台湾ドル高の急進展と半導体業界への衝撃

2025年5月、台湾ドルは1日で5%も急騰しました。このような急激な通貨高は、過去30年以上で最大の上昇率を記録しています。

台湾ドルは、この1か月間で約11%も上昇し、一時的に1米ドル=29.59台湾ドルという約3年ぶりの高値をつけました。このような急激な通貨高は、世界の半導体業界に大きな影響を与えています。特に、世界最大の半導体受託生産企業であるTSMCにとっては、輸出収益への悪影響が懸念される事態となっています。

では、なぜこのタイミングで台湾ドル高が進行しているのでしょうか。

その背景には、アメリカの新たな関税政策と、それに対する対象国の報復関税の動きがあります。2025年1月にトランプ第2次政権が発足して以降、アメリカと中国、さらにはカナダやメキシコとの間で、立て続けに追加関税の応酬が発生している状況です。

台湾ドルの急激な上昇を示すチャートグラフ

輸出業者が保有する米ドルを急いで台湾ドルに交換しようとしているとの観測が広がり、この急激な通貨高を引き起こしています。半導体業界にとって、この状況は収益構造に直接影響する重大な問題です。

TSMCの好調とSamsungの苦戦が示す半導体業界の二極化

台湾ドル高の影響を受けながらも、TSMCは驚異的な業績を記録しています。

2024年第3四半期において、TSMCの純利益は前年同期比で54%増の3,253億台湾ドル(約101億1,000万米ドル)となり、市場予想を上回って過去最高を更新しました。この背景には、AI向け半導体の需要拡大があります。売上高も36%増の235億米ドルとなり、自社予想である224億〜232億米ドルを上回る結果となりました。

TSMCのウェンデル・ファン最高財務責任者は、「第3四半期の当社の事業は、業界をリードする当社の3nmおよび5nm技術に対するスマートフォンやAI関連の旺盛な需要に支えられました」と説明しています。さらに、「第4四半期も、最先端プロセス技術に対する力強い需要に支えられ続けると期待しています」と述べました。

TSMCは、2024年の売上高が米ドルベースで30%近く増加すると見込んでおり、AI関連の売上高が全体の10%台半ばを占めると予測しています。

一方で、Samsung Electronicsの状況はどうなのでしょうか。

TSMCとSamsungの業績比較を示す対照的なグラフ

2025年3月19日に開催されたSamsung Electronicsの第56期株主総会では、株主から「半導体技術のリーダーシップがないから株価が下がり続けるのだ」といった不満の声が上がり、経営陣が謝罪する場面がありました。

サムスン電子の株価は、2024年3月時点では8万ウォン(約8,000円)を超えていましたが、2025年3月19日には5万8,500ウォン(約5,800円)にまで下落しています。2024年の株主総利回り(TSR)は、サムスン電子がマイナス30.4%だったのに対し、メモリー大手のSK hynixはプラス24.5%と、大きな差が生じました。

なぜこのような差が生まれたのでしょうか。